オリジナル・バルジュー・クロノグラフ再生(後半)

Custom Antique Chronograph #2

目次

前半 - ムーブメント編

後半 - 外装編

ケースの研磨、金メッキ、風防

ケースをキレイにリフォームします。

もとの状態

まず、サビやキズ、金メッキを落とします。耐水ペーパーで丹念に磨き落とした後、アモールを研磨クロスにつけて磨きます。プラスティック風防のキズ落とし用のサンエーパールも良いです。最後はバフがけして鏡面に仕上げます。

磨き布、1000番から3000番の耐水ペーパー、
アモール、サンエーパール

リューターによるバフがけ

鏡面に仕上げた下地

下地が整ったので、「めっき工房」を使って金メッキを施します。(脱脂→ステンレス前処理→ニッケルめっき→金めっき)の順番で行います。

手軽にメッキができる「めっき工房」

メッキ直後

金メッキしただけでは曇った金色のままですが、セルベット(磨き布)で磨き、バフがけすると写真のようにピカピカになります。

金メッキ完了

続いて、新しいプラスティック風防を取り付けます。

ベゼルの内径をノギスで測り、+0.1mmのサイズのプラスティック風防を選びます。

ノギスで計測

プラスティック風防

ベゼルに風防を装着

ケースのリフォームは完了です。

再生されたケース

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針、文字盤、ケーシング

針を準備します。汎用パーツやジャンク品から選びます。

ゴールド系の針

ブルースチールの針

ブルースチールの針は加工できないので、文字盤の数字のインデックスのゴールドに合うことからも、ゴールドの針にしました。

文字盤にマッチする適当な長さにカットし、先端をヤスリ、磨き粉でなめらかに整形します。同様に秒針、クロノグラフの計測針も磨いて古いメッキや汚れを取り除きます。

ヤスリとヨウジに付けた磨き粉で整形する時針と分針

研磨中のクロノグラフ針と分計測針

ケースのめっきに使った「めっき工房」

「めっき工房」で再び金めっきを施し、軽くバフ掛けして針は完成です。最後に、オールドクロノの味でもある先端の湾曲も忘れません。

金メッキ、バフがけで再生した針

デッドストックのドイツ製の文字盤

文字盤は一年以上前に入手したドイツ製のノーブランドのデッドストックの文字盤です。当時は何の目的もなく単にバルジュー用という言葉に惹かれてeBayで競り落としました。 ゴールドのアップライト(はめ込み式)のアラビア数字インデックスが白い文字盤によく映えます。ブランド名がプリントされていないところも気に入っています。


いよいよケースにムーブメントを搭載します。

今の腕時計は裏側からムーブメントを入れクランプで固定するだけですが、アンティーク時計のほとんどは、表側の文字盤と裏側からの固定ネジでムーブメントをケースに挟み込む方法をとります。

時針用の歯車(ツツ車)を付けた後、文字盤をかぶせます。裏返して、文字盤の2本の足を偏心ネジ(黄色の矢印)でしっかり固定します。

ツツ車と座金

文字盤の裏

ケースのめっきに使った「めっき工房」

ケースの表側から、文字盤の付いたムーブメントを慎重に入れます。

表側からムーブメントを置く

裏側からネジ固定

2箇所のネジ(青い矢印)でムーブメントを裏側からしっかり固定します。その後、オシドリ固定ネジ(黄色い矢印)を緩め、巻き芯を挿入しますが、ネジを緩めすぎると表側のパーツが分解してしまうので要注意です。

ムーブメント固定ネジ 1

ムーブメント固定ネジ 2

オシドリを緩めるネジ

針の取り付けはクロノグラフの組て立ての中でも非常に難しいです。 ハンドプレスで文字盤や針同士が接触しないよう身長に取り付けます。 連動する針の1本でも動かないと時計全体が止まってしまいます。

分積算計は分単位で動くので、必ず目盛に針が重なる角度に付ける必要があります。また、クロノグラフ針もリセット時にゼロ目盛に来るよう正確に取り付けます。

Horotec社のハンドプレス

すべての針が取り付け完了

風防付きベゼル、裏蓋をケースにはめ込み、"一応"、組み立ては完了です。

組み立て完了

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問題の対処

これまでに発生したいくつかの問題を紹介します。

オペレーティングレバー破損

オペレーティングレバーで、直接プッシャーからの力を受ける部分が破損しました。もともと金属疲労していたものと思います。

破損した部分

ジャンク品のスペアを代用します。問題の箇所が一体整形されているので耐久性があるはずです。サビを落とし、摩擦面の裏側もポリッシュして取り付けました。

代用品

(上)今回のパーツ
(下)代用品

修理完了

クロノグラフ針の異常

クロノグラフ針が正しく動きませんでした。まず、ストップウォッチをスタートしていないのに分針とともに動き、スタートすると時計全体が止まります。リセットするたびにと針の戻り位置がずれていきます。

針のない状態でのクロノグラフの稼動テストは問題なく、クロノグラフ針の軸の部分に問題があることが判明しました。

@クロノ針の取り付けがゆるいため、クロノグラフランナー(ホイール)動いていないのに、分針(ツツカナ)内部との摩擦で一緒に動いていました。

Aスタートすると、今度は逆に分針との摩擦により、動けません。結果、時計全体が止まります。

Bリセットすると、ハンマーがクロノグラフ針の軸のハートカムをたたく衝撃で針がずれるのでした。

かってに動くクロノグラフ針

Bは明らかにクロノグラフ針の軸「はかま」の穴が緩いのです。ペンチで穴を小さくしました。@、A対策として、二番車とツツカナの内壁を清掃し、クロノグラフ針のはかまの外側をポリッシュしました。これで内側の摩擦やひっかりも解消されました。

クロノグラフランナーを取り外したムーブメント

ペンチ

ポリッシュしたクロノグラフ針の軸

分積算計が50秒でカウントアップ

これは問題というより調整ですね。

@ ドライビング・ホイールとトランスミッション・ホイールの噛み合わせ具合で、針飛び(浅い)や摩擦による停止(深い)がおきないよう調整

A トランスミッション・ホイールとクロノグラフ・ランナーの噛み合わせ具合で、スタート時の針の動きを調整

B クロノグラフ・ランナーとスライディング・ホイールの噛み合わせ具合で、分積算のタイミングを調整

3箇所のクロノグラフ調整ネジ

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革ベルトの装着

もともとは金属製のエクステンションベルトでしたが、個人的に革ベルトが好みなので、カミーユ・フォルネ(Camille Fournet)のダークブラウンのベルトを装着します。ゴールドの時計には赤みのある色が似合います。

カミーユ・フォルネのクロコダイルベルト

カミーユ・フォルネといえば、カルティエ等の高級宝飾ブランドにも採用される老舗で、手縫いで仕上げられる逸品です。独自のアビエシステムにより、ケースをキズ付けず、工具不要で容易に着脱することができます。

フランス製

アビエシステム

装着完了

アンティーク調の細身の17mmベルト

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完成

出来上がりました。50年代の上品なアンティーククロノグラフの復活です。

ひげのように繊細なクロノグラフ針、アップライトのインデックス、ドーム型のプラ風防、クロコダイル革ベルト。
手巻きムーブメントは、ピラーホイール式クロノグラフ、毎時18,000振動のロービート、チラネジ付きテンプ。
直径37mm、厚さ13mm

全体像

文字盤

サイドビュー